2026年4月1日から、妊婦さん向けの「RSウイルスワクチン」が定期接種(助成対象)になるというニュースが話題ですね。
「赤ちゃんを守れるなら打ちたいけれど、いつ打つのが一番いいの?」
「副作用や赤ちゃんへの影響はないの?」
と、ネット上の情報があふれていて不安に感じている妊婦さんも多いのではないでしょうか。
今回は産婦人科専門医の視点から、「医学的な根拠」に基づき、フラットかつ分かりやすく解説します。
実は、このワクチンは「打つタイミング」によって、赤ちゃんへの効果が少し変わってきます。
スケジュールを立てる際の参考にしてみてくださいね。
【結論】RSワクチンを打つなら「妊娠28週以降早めに」が理想的!
結論から言うと、定期接種期間(妊娠28週〜36週)の中でも、できるだけ前半の「28週〜33週頃」に打つのがベストです。
その理由は、お母さんが作った免疫(抗体)が、へその緒を通じて赤ちゃんに最も効率よくプレゼントされるためには、「ワクチンを打ってから出産するまで、約5週間以上空いているのが理想的」というデータがあるからです。
なぜ5週間かかるの?(医学的な根拠)
- RSワクチンは、お母さんが打つことで体内に抗体を作り、それを胎盤経由で赤ちゃんに移行させる「母子免疫」を利用しています。
- 赤ちゃんに十分な抗体が移行するのに、少なくとも2週間は必要と考えられています。1)
- 海外の研究データでは、接種から分娩までの間隔が約5週間以上あると、最も高い移行効率が得られることが分かっています。2)
- つまり「分娩2週間前でも一定の効果は見込めるけれど、5週間前程度空けるのが望ましい」ということです。
- そのため、28〜36週の範囲であれば、できるだけ前半(28〜33週頃)に接種するのが理想的と言えます。
RSワクチンはなぜ「もっと早く」打ってはいけないの?(24週など)
「5週間かかるなら、もっと早く打っておけばいいのでは?」
と思うかもしれません。
実はこのワクチン、妊娠24週からの有効性・安全性が確認されているので、もっと早めに打つことも可能です。3)
定期接種で28週以降になっているのは理由があります。
RSワクチン定期接種が28週以降である理由:一時期、早産のリスクが心配されていた
過去の海外のデータで「早い時期に打ったグループで早産が少し多かった」という報告が出た時期がありました。
しかし、その後の詳しい検証により、ワクチンと早産との因果関係(ワクチンが原因で早産になるということ)は否定されています。
ただし、諸外国では、これを心配する声を反映して、妊娠32週からの推奨となっている場合が多いです。
日本においては、32週未満の妊婦にも接種機会を提供し、赤ちゃんへの抗体移行を確実にするメリットを重視して28週以降となった経緯があります。4)
RSワクチンは36週で打っても意味がないの?
「5週間必要なら、36週で打っても意味がないのでは?」と心配になるかもしれませんが、そんなことはありません
実際の出産は妊娠39週以降の場合も多い(約50%)ため6)、ギリギリでも接種から2週間は確保できる可能性があります。
36週までOKとされているのにも、きちんとした理由があります。
それは、打ち逃した妊婦さんへの「拾い上げ」のためです。
チャンスを逃さず、できるだけ多くの赤ちゃんを守るために「36週まで」と幅を持たせているのです。
RSワクチン接種から2週間未満に産まれた場合は全く効果がないの?
RSワクチン接種から2週間未満にお産になった場合の有効性についてのデータはありません。
しかし、ワクチン一般論として、接種数日後から抗体が作られ、赤ちゃんにも移行することが確認されています。
したがって、2週間未満であっても「全く効果なし」ではないと考えられます。
RSワクチンの効果や副作用の基本情報(サクッと解説)
RSワクチンにはどんな効果があるの?
赤ちゃんがRSウイルスに感染して重症化(肺炎など)するリスクを、約7〜8割も減らすことができます。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分でワクチンを打てないので、お母さんからの最高のプレゼントになります。
RSワクチン有効性のデータ(医学的な根拠)
解析データによると、「妊娠32〜36週での接種」により、生まれてきた赤ちゃんがRSウイルスによる重症な呼吸器感染症にかかるリスクに対し、65〜82%程度の有効性(重症例ではさらに高い)が示されています。3)
RSワクチンの副作用は怖くない?
注射をした場所の痛み、頭痛、筋肉痛などが起こることがありますが、これは一般的なワクチンと同じです。3)
ほとんどの場合、数日で自然に治まりますので安心してくださいね。
なお、前述の「早産リスク」と同様に、”妊娠高血圧症候群” についてもリスク上昇の懸念がされていましたが、こちらも現在では否定的となっています。5)
RSワクチンは日本で導入されてまだ間もないけど大丈夫?
「新しいワクチン」と聞くと、「まだ間もないけど本当に大丈夫?」と不安になるのは、赤ちゃんを想う親心として当然のことですよね。
でも、ご安心ください。
日本国内でこのワクチンが承認されたのは2025年と最近ですが、海外ではすでに一般的なワクチンとして累計数十万件以上の接種実績があります。
また、「外国人向けの薬なのでは?」と心配されるかもしれませんが、米国で実施された大規模な臨床試験には日本人の妊婦さんもしっかりと参加しています。
その結果、安全性や有効性に人種(民族)による差がないことが医学的に確認されています。6)
すでに世界中のたくさんの赤ちゃんをRSウイルスから守ってきた確かな実績があるワクチンです。
これからも世界中でデータが蓄積され、より一層の安全確認が進んでいきますので、どうぞ安心して接種を検討してみてくださいね。
【戦略的アドバイス】ベストなタイミングを逃さないためのアクション
最後に、産婦人科医からのおすすめのアクションプランです。
RSワクチンは「絶対に打たなければいけない」ものではありません。
しかし、もし「赤ちゃんのために打ちたい!」と決めたなら、早めのスケジュール調整が鍵になります。
次にとるべき行動:
・妊娠26週〜27週頃の妊婦健診の際に、「そろそろRSワクチンを打ちたいのですが」と主治医の先生に相談してみましょう。
・お住まいの自治体によって手続き方法が異なるため、事前に市区町村のホームページもチェックしておくと安心です。
ワクチンを打っても打たなくても、お母さんが赤ちゃんを想う気持ちは同じです。
過度に不安にならず、手洗いやうがいなど、家族全員でできる基本的な感染対策を続けることも立派な「赤ちゃんを守る行動」です。
ご自身の体調や考え方に合わせて、かかりつけ医と相談しながら決めていってくださいね。
参考文献
- Abu-Raya et. al. Respiratory syncytial virus vaccination in pregnancy. CMAJ. 2024.
- Jasset et. al. Longer interval between maternal RSV vaccination and birth increases placental transfer efficiency. medRxiv. 2024.
- Katherine E Fleming-Dutra et. al. Use of the Pfizer Respiratory Syncytial Virus Vaccine During Pregnancy for the Prevention of Respiratory Syncytial Virus–Associated Lower Respiratory Tract Disease in Infants: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2023. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023.
- 厚生労働省健康・生活衛生局 感染症対策部予防接種課. 第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会議事録. 2025.
- Gabet et. al. Maternal and Neonatal Outcomes After Respiratory Syncytial Virus Prefusion F Protein Vaccination During Pregnancy: Analysis From the 2024-2025 Immunization Campaign in France. Obstet Gynecol. 2026.
- 日本参加婦人科学会周産期委員会. 周産期データベース.2024.
- Otsuki et. al. Efficacy and safety of bivalent RSVpreF maternal vaccination to prevent RSV illness in Japanese infants: Subset analysis from the pivotal randomized phase 3 MATISSE trial. Vaccine. 2024.